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シグサギ兄妹設定です。幽世の門時代捏造。

*5-2


これほどまでに破壊力を持つ言葉を、
他に知らずに生きてきた俺は幸せだったのかもしれない。


「おにいちゃん」




人を殺める術を叩き込まれて、幼い感覚はそれが間違いである事すら知らずにいた。
一つ下の妹は俺より賢く、教えられた事をすんなり飲み込んで
大人達の意図通り兵器になっていった。

俺は妹より運動能力が勝った。
引き付け役と息の根を止める役、重宝がられて兄妹二人よく駆り出された。
兄妹揃って人殺しに向いてるなんて皮肉なもんだ、と思った。

(初めて行った時は腹を怪我したっけ)

動きの遅さを、躊躇を咎められた。
生身の人間相手は初めてで、その体温にぞくりとした事を覚えている。
最高に気持ち悪かった。多分吐いた。

妹の目前で人を殺める事が多かった為、
その時の彼女の表情を努めて見ないようにしていた。

いつしか、妹は笑顔しか作れなくなっていた。






「シグレ、オボロさんが呼んでる」
「あん?」
「仕事」
「あ~~…面倒くせえな…」
「わたしもいくよ」
「……そ、か」

頭をがりがり掻いて、シグレは咥えていたキセルの灰を落とした。
これは組織を抜けてから吸い始めたと、サギリは記憶している。
そして自分がシグレを名前で呼ぶようになったのも、その頃からだ。

少しだけ、少しでも変わろうとした結果だった。

横に並んで歩きながら、サギリは頭一つ高い位置にあるシグレを見上げる。

「………」
「どした?」

故意に伸ばした前髪に見え隠れする瞳が、優しい色をしてサギリを見る。
思わず懐かしい呼称で呼んでしまいそうになり、言い止まった。

(おにいちゃん)

そう呼んでしまえば、過去に引き戻すかもしれないから。

「…シグレ」
「ん?」
「仕事、がんばるよ」
「あ?ああ、うん」

分からないという顔をしたシグレの手を取り、行こ、と促す。
シグレはちょっと驚いた様子だったが、頭を掻いて軽く頷いた。

手を繋ぐ事は唯一、昔からやっているのに昔を思い出さずに済む行為だ。
この分なら、おにいちゃんと呼べる日もきっとすぐ来る。

「サギリ、笑ってんの?」
「うん」

答えると、シグレはそう、そいつはいいや、と短く言ってキセルを仕舞った。




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あああ あつい、うちに、打て………(ガクガク


2006.03.07


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(C)3mm.別部屋 ブログ管理者 東
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