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銀魂以外のもの置き場。
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過去捏造でジャンコイです。過去というほどあんまり大したもんじゃないですが。
長めですー




雨の気配と花の彩り

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竹田隆という人間は、太陽のにおいと、潮風と、花の彩りで出来ている。
それはガキの頃から変わらなかった。

俺はというと中坊の頃から、古本屋の黴くささや鉛筆削りの木のにおい、
それと少しの雨の気配で出来ていた、らしい。

らしい、というのはいつだか隆がそう言ったからだ。



「お前に会うときは大概雨降ってるな」

え、顔を上げると、黒いズボンしか見えなかった。
視線を上に移すと、隆が笑って立っていた。

「あれ…久しぶり」
「おう」

少しネクタイを緩めながら返すと、隆は黒い傘をくるくる回して雨を払った。

「今帰りか」
「うん」

俺の高校はブレザーだが、学校の違う隆は学ランだ。
当時既にずば抜けた体格であった彼にそれは窮屈そうで、
入学した時「特注だった」と笑っていた事を思い出した。

「傘ねえの?」

古本屋の軒先でぼんやり単行本を読んでいた俺は、
見た目にも雨宿りということがバレバレだったようだ。

「うん。急に降ってきたから」
「もう夏も終りかもな」
「つくつくぼうしも鳴いてるしな」

単行本を鞄に仕舞うと、俺は隆を見上げて、更にその向こうにある暗い雨空を見上げた。
雨は当分止みそうにない。

「駅だろ?入れてってやるよ」
「でも逆方向じゃないか?」
「んー…じゃ一回うち来い、傘一本貸しちゃる」
「ありがとう、助かる」
「水くせえなー」

そう言って俺が濡れないように古本屋の軒先に傘を傾ける。昔からこうだ。
その温かさに少し気恥ずかしくなって、彼の傘の柄に手を伸ばした。

「傘、持つよ」
「…いやお前、お前が持ったんじゃ俺が入れんし。高さが足りない」
「あ、そうか」
「……」
「…何だよ」
「いや~相変わらずだな、コイ」
「…馬鹿にされている…?」
「してないよ」

言って彼は俺の頭をがしがし撫でた。
それは子供にそうするようで、どう考えても男子高校生同士がする行為ではなかったが、
身長差が違和感なくさせていた。俺は彼の胸元までしか身長がない。

「…二週間位前だっけ?会ったの」
「うん。雨降ってたな」
「そうだっけ?よく覚えてんなあ」
「そりゃあお前」

そこで言葉を切るから、俺は不思議に思って傍らを見上げる。
彼はそんな俺を見つめ返して、「なあ、うん」とか曖昧に言った。

「なに?途中で止めんなよ」
「あ、ほらウチ着いた」

彼は話題を逸すように言う。
俺は雨に濡れた花屋の看板を見上げて、彼を追及するのをやめた。

「玄関で待ってろ」
「ん」

店内を通って、反対側にある玄関へ向かう。
カウンタの親父さんに挨拶をすると、親父さんはこう雨じゃ商売あがったりだよ、と笑って言った。

「おうそうだ小岩井君、これ持ってけ」

言って親父さんは店の前から真鍮の花活けを持ってきて、花をごそっと抜き取って俺に寄越す。
差し出されたのはガーベラの束で、ピンクやオレンジ色の花が満開に咲き誇っていた。

「え?いえ、そんな」

遠慮すると彼は隆によく似た人懐っこい笑い顔で、いいからいいからと言った。

「雨の日は切花は外に出せんのよ。明日も雨だっつうし、もう開き切ってるから。持ってってくんな」
「すみません、ありがとうございます。飾ります」
「人に見られた方が花は綺麗に咲くからな」
「そうなんですか」

器用にくるくると新聞紙で花束を巻き、水替えてやれば結構持つから、と渡してくれる。
綺麗に咲き誇った花達は確かにそのまま誰にも見られず枯れるのは勿体無くて、
俺は有難く受け取った。

「おい、コイー?」
「あ」

玄関側から呼ばれて、俺は親父さんにもう一度礼を言い奥へ向かった。

「ありゃ、なんだ親父か?」

隆は青色の傘を俺に渡しながら、花束を見て言った。

「うん、貰った。ありがとう」
「ガーベラより夏水仙の方が咲き切るの早いのになあ」
「おー…お前もすっかり花屋だな」
「ああ、まあね」
「傘もありがとな。明日返しに来るわ」
「急がなくていいぞ。また会った時にでも」
「いつ会うか分からないのにか?」
「前会った時も降ってたからな。雨が降ったらまた会うさ」
「何だそれ。詩人か」

隆は少し笑って、やんわりと俺を抱き込んですぐ離した。

「冷たいな。風邪引くなよ」
「…うん」
「じゃあな」
「……うん」
「…コイ、連れ込みたくなるからそういう顔やめろ」
「いや、何言ってんだお前」
「キスしていい?」
「…うん」

俺はその時抱きつきたかったのだけれど、傘と花で生憎両手が塞がっていた。
短く淡白に終わったキスに雨のにおいが交じり合って、じっとりと冷たい、
しかし柔らかい感覚が腹の底から突き上げた。

「コイは雨のにおいがするな」
「なんだそれ」

そのまんまだ、と隆は至極真面目な顔をして言った。
あんまり真面目に言うから、そう、と返すしかなくて、そしておかしくなって笑った。

じゃあ、と短く言って、俺は彼の家を後にする。
彼の青い傘を広げると、曇り空が多少晴れたように思えた。

腹の辺りでは、まだあの優しい感覚がちろちろと溶け残っていた。



**



「今日も雨だー」
「昨日も雨だったな」
「夏なのにな。嫌だなぁー」
「うん」
「もう夏も終りかもな」
「つくつくぼうしも鳴いてるしな」
「よつばは?さっきまでいたのに」
「昼寝だと思う」
「俺も眠いな…昼寝しようかな」
「ああ、寝室使っていいぞ」
「コイは眠くねえのか」
「んー…俺は雨、嫌いじゃないからな」

ふうん、と隆は言って欠伸を連発する。
俺は隆と、机に飾ったガーベラの花を見てあの雨の日を思い出していた。

「ん?コイなに笑ってんの」
「いや、ちょっと思い出した」
「へ」
「雨のにおいがするな」
「??」

俺はさあさあと雨を産み出す曇り空を見上げて言って、そして大きく伸びをした。




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ついに過去まで捏造し出しました。高校は違うといいと思うんです
小岩井くんの高校はブレザーで 夏は半袖シャツにベストで 小岩井君は鞄つうかデイバック派で
(止まらなくなるのでやめます)




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